遺言書の種類と特徴

遺言とは、遺言を残した人(遺言者)の最終の意思を尊重するものであり、遺言者が亡くなった後に効力が生じるものです。効力が生じた後に、相続人間で「遺言書が偽造されている」とか「記載されている内容の意味が不明だ」などの争いが生じても、遺言者本人にその真意を確かめることはできません。

そのため、できるだけ遺言者の真意を確保し、紛争を予防するため、遺言書を作成する際に従うべき方式を法律によって厳格に定めています。そして、この方式に従って作成されていない遺言書は無効とされてしまいます。

◇遺言は大きく分けて「普通方式」と「特別方式」がありますが、ここでは一般的な普通方式の説明をしていきたいと思います。普通方式には①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言の三種類があり、それぞれの特徴に触れていきます。

 

1 自筆証書遺言

遺言者が、遺言の内容を自筆で書面にし、署名及び押印をすることにより作成する遺言書です。この方式は自分だけで遺言書を作成でき、しかも紙とペン、印鑑があれば作成できるため、特段費用もかからず簡便な方式と言えます。

しかし、その作成方法は法律により厳格に定められているので、法律で定められた要件を欠いてしまい遺言が無効になったり、記載内容が不明確であるとされ、遺言通りの内容が実現されなくなってしまう可能性があります。

また、その保管方法が適切でないと、紛失してしまったり、遺言者が亡くなった後も発見されないままとなってしまう危険性もあります。

 

2 公正証書遺言

公証人に作成を依頼し、公証役場にて証人二人の立会いのもと作成される遺言です。

自筆証書遺言に比べて手間や時間がかかることは否めません。また、公証人に支払う作成手数料等の費用がかかりますし、遺言の内容を第三者である公証人や証人に知られてしまうことにもなります。

しかし、公正証書遺言は、専門家である公証人が遺言書を作成するため、方式の不備で無効となったり、内容の解釈をめぐって相続人同士の争いになる可能性はほとんどありません。

また、公証人が遺言者に遺言能力があるかを確認しますので、後に遺言能力が無かったと争われる可能性も低くなります。遺言内容が実現可能であるかも公証人が検討するので、遺言内容を実現するという点ではこの公正証書遺言が非常に確実性の高い方法となっています。保管に関しましても、公証役場での保管となるので紛失や改ざんの心配もありません。

また、全国どこの公証役場においても遺言書の有無の確認ができますので、相続人などの利害関係を有する人が調べてさえくれれば、必ず発見してもらえます。

 

3 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、まず遺言者が作成した遺言書(遺言書の記載はワープロ・代筆も可)に署名、押印をして封筒に入れた後、遺言書に押したものと同じ印章で封印します。そして、その封書を公証役場へ持ち込み、公証人と二人以上の証人の前に提出し、遺言者は中身が自己の遺言書であることと氏名、住所を申述します。公証人は、封筒に提出された日付と遺言者が申述した内容を記載した後、その封筒に公証人、証人と遺言者が共に署名、押印します。

秘密を守りつつ遺言したことを明確にできる方法ですが、手続きが煩雑な割には、「内容に関して公証人の検討は無い」「保管は任意である為、紛失の危険がある」などの理由から自筆証書や公正証書と比べると選択されるケースは圧倒的に少ないです。

   
◇遺言作成に当たって最も比較される自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットをまとめると下表のようになります。

   自筆証書遺言  公正証書遺言
メリット
  • 自分一人で作成できる
  • 費用がかからない
  • 遺言書の存在と内容を秘密にできる
  • 方式の不備で無効となるおそれがない
  • 内容実現の確実性
  • 遺言能力等で争われるおそれが低い
  • 紛失や改ざんのおそれがない
  • 相続人が遺言書の存在を検索できる
  • 家庭裁判所での検認が不要
デメリット
  • 方式の不備で無効になるおそれ
  • 内容の解釈が問題となるおそれ
  • 相続人間で遺言能力等が争われるおそれ
  • 紛失や改ざんのおそれ
  • 遺言書が発見されないおそれ
  • 家庭裁判所での検認が必要
  • 公証人への依頼や証人の確保などの手間がかかる
  • 費用がかかる
  • 公証人と証人に内容を知られる 

【検認】 遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。

また,封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。

検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

    
◇以上のようなメリット・デメリットを踏まえた上で自筆証書遺言か、公正証書遺言かを選択することになりますが、先にも記載した通り相続人同士が争いになることは財産の多寡に関わらず起こりうるものですので、作成する理由にもよりますが、やはり安心、安全、確実な公正証書遺言が望ましいと思います。

司法書士が必要書類の収集、作成支援から公証人との打合せ、証人のご用意までサポートいたしますので、お手間という部分では大幅に軽減することができます。

また、遺言者が病気等の理由で公証役場まで出向くことができない状況であれば、公証人に自宅や病院に出張してもらうこともできます。費用が許すようであれば公正証書遺言をご検討頂くことをお勧めいたします。

当事務所では自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれのサポートもご用意しておりますので、遺言書の作成をお考えの際は、お気軽にご相談下さい。

 

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