1 遺言執行者とは
遺言執行者とは遺言の内容をその通りに実現する者のことをいいます。
非常に重要な役割を担う反面、その認知度は決して高くないことから、公正証書遺言では大抵遺言執行者が指定してありますが、直筆証書遺言では指定されていないことが非常に多いです。
2 遺言執行者になれる人
「破産者」「未成年者」以外は基本的に誰でも遺言執行者となることができます。
一人でも複数でも、法人であってもなることが可能です。利害関係者が遺言執行者となることで他の相続人ともめるケースは少なくありませんので、そのような不安がある場合は司法書士といった専門家を遺言執行者に指定することが安心かと思います。
3 遺言執行者を指定する方法
遺言執行者の指定方法は以下の3通りがあります。
- 遺言書において遺言執行者を定めておく
- 特定の第三者に遺言執行者を指定してもらうよう遺言書に記載する
- 相続発生後に、相続人等の利害関係者が家庭裁判所に申し立て、遺言執行者を指定してもらう。
遺言書において遺言執行者を定めてあっても、それを実際に引き受けるかは指定された者の判断となります。断る場合であっても特に理由は必要ありません。
また、「認知」や「相続人の廃除または廃除の取り消し」は必ず遺言執行者が必要になります。
4 遺言執行者の仕事
・子の認知
遺言執行者のみが行える手続です。就任してから10日以内に市区町村へ届出をします。
・相続人の廃除または廃除の取り消し
遺言書にて相続人の廃除または廃除の取り消しがある場合は、遺言執行者が家庭裁判所にて必要な手続きを行います。
・遺贈や寄付行為
遺言執行者の指定があれば当該執行者で手続きができます。指定されていない場合は相続人全員で手続する必要があります。
・各名義変更手続・解約手続
代表的なものとして不動産、預金、株式などの相続手続があります。
このうち、不動産の名義変更は管轄の法務局への登記申請が必要になりますが、遺言執行者と不動産の取得者が異なる場合、遺言執行者による登記申請もしくは司法書士への委任はできません。あくまで不動産を取得した相続人本人が登記申請もしくは司法書士への委任をすることになります。
もちろん遺言執行者が司法書士に相談に来られて、司法書士と不動産取得者たる相続人との窓口になることは問題ありません。
*遺言執行者は就任した際は、その旨を遅滞なく相続人や受遺者(遺贈を受けた人)に通知し、また遺産目録を作成し交付しなければなりません。そして、全ての手続が完了した後に、完了報告の通知が必要になります。
5 遺言執行者を指定するメリット
遺言の内容にもよりますが、相続人が複数いる場合や、または遠方に住んでいる、疎遠となっている相続人がいる場合、遺言執行者を指定していなければ預金の名義変更や、登記関係の手続で都度相続人全員の署名や押印が必要になる為、時間も手間もかかってしまいます。
その点、遺言執行者が指定されていれば単独で手続きを行ったり、専門家との窓口になることができますので、相続人全員で行うよりもスムーズに手続を進めることが可能です。これだけでも遺言作成段階で遺言執行者を指定しておくメリットは大いにあると思います。
また、遺言執行者を指定していれば、他の相続人が勝手に相続財産を処分してしまうなど執行の妨げとなるような行為は無効とすることができますので、遺言作成時に、そのようなことが懸念される場合は万が一の為に遺言執行者を指定しておくと安心でしょう。
6 遺言執行者を司法書士に指定するメリット
・相続人全員の負担を軽減したい
遺言執行者を相続人のうちの一人に指定した場合、その他の相続人の負担は大幅に軽減されますが、執行者自身はそれ相応の重責を担うことになります。
また、大半の手続は窓口が平日のみの対応となっており、さらに子の認知が遺言にあれば、遺言執行者は就任してから10日以内に手続をしなければならないなど、遺言執行者への負担は大きいと言わざるを得ません。この様な問題は遺言執行者を第三者である司法書士に指定することで解消できます。
・遺言執行者を指定することで相続人同士もめてほしくない
遺言を作成する上で、自身亡き後、相続人同士でもめて欲しくないという願いを込めて作成される方は多いかと思います。良かれと思って相続人の一人を遺言執行者に指定したがそのことが原因で相続人間に軋轢が生じてしまっては不本意でなりません。
その点利害関係のない司法書士のような第三者が遺言執行者に指定され、常に中立な立場で執行の手続を取り計らうことで相続人同士が余計にもめてしまうようなことは回避できることがあります。
また遺言執行者の費用については相続財産から控除できますので相続人が直接費用を負担する等の心配はいりません。
とは言え、全てのケースにおいて遺言執行人を指定することが望ましいということではありません。遺言作成に当たり色々とお話をうかがった上で、専門家としての公正な視点から最もご希望に沿う方法を検討していきたいと思いますので、先ずはお気軽にご相談下さい。