【遺言で定められること】
遺言に記載しておけば、どんなことでも法的な拘束力が発生するわけではありません。法的な効力が発生する事項は法律により定められています。これらを「遺言事項(法定遺言事項)」といいます。大きく分けると「財産に関する事項」「身分関係に関する事項」そして「遺言執行に関する事項」があります。
【財産に関する事項】
財産に関する遺言事項は以下のようなものがあります。
- 祭祀主催者の指定:民法897条1項但し書
- 相続分の指定・指定の委託:民法902条
- 遺産分割方法の指定・指定の委託:民法908条
- 特別受益の持ち戻しの免除:民法903条3項
- 相続人相互間の担保責任の指定:民法914条
- 遺贈:民法964条
- 遺留分減殺方法の指定:民法1034条但し書
- 信託の設定:信託法3条2号
- 生命保険受取人の変更:保険法44条1項
- 一般財団法人の設立・財産の拠出:一般法人法152条2項等
【身分関係に関する事項】
身分関係に関する遺言事項には以下のようなものがあります。
- 遺言による認知:民法781条2項
- 未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定:民法839条1項等
- 推定相続人の廃除・取り消し:民法893条、894条
【遺言の執行に関する事項】
遺言の執行に関する遺言事項は以下のようなものがあります。
- 遺言執行者の指定・指定の委託:民法1006条1項
【遺言事項に当たらない事項について】
上記のような遺言事項に当たらない事項を記載した場合、当該事項については法的な拘束力は発生しませんが、即ち意味がない、記載してはいけないということにはなりません。「このように埋葬してほしい」「この寺院で供養してほしい」などを記載される方は少なくありません。
その他には、例えば、遺言により法定相続分を下回る財産を相続した相続人に対して、「なぜそうしたか」の理由など、いわゆる「付言」を記載することは実務上一般的と言えますし、遺言事項のみ記載されたものよりも、より故人の心がこもっている印象を与えます。当事務所としては積極的に記載して頂くようにご案内しております。
遺言事項だけにこだわることなく、心のこもった温かい遺言によって故人の人となりが垣間見えることで、財産だけでなく故人の「心」も継がれていくことも遺言の重要な役割であると感じています。