◇「遺言」という言葉にどの様なイメージをお持ちでしょうか?
中には「遺書」と混合して少し暗めなイメージを持っている方も少なくありません。
または、「財産のたくさんある人が作るもの」「家族仲が悪く、相続争いが起きそうな場合に必要になるもの」「老い先が短くなった人に必要なもので、まだまだ現役の自分には考える必要のないもの」などのイメージから、ご自身とは無関係なものという位置付けをしてしまっている方も多いのではないかと思います。
しかしながら、相続人同士で揉めてしまうケースは、財産の多寡や、元々の仲の良し悪しとは関係していないことも多いのが現実です。残念なことではありますが、一銭でも多く貰いたいと思う人が出てくることは不自然なことではありませんし、どんなに仲が良い家族と思っていてもその配偶者や周囲の思惑と絡んで、争いへと発展してしまうことだってあります。
この様な問題は「財産をどの様に分けるか」ということを相続人に任せてしまうことが大きな要因となっています。遺言がなければ財産は法定相続といい、法律で定められた人(法定相続人)に法律で定められた割合で分配されるか、もしくは相続人全員で遺産分割協議を行い、それに従い分配することになります。
従って、予め遺言によって、分配方法を指定しておけば、相続人同士でどのように分けるかという話し合いは基本的に無くなりますので、「相続」が「争続」となることを未然に防ぐことができると言えます。
また、もしご自身が法定相続人以外に取得させたい財産がある場合は、遺言にその希望を記載することにより実現することができるのです。
「遺言」は「法的な効果を発生させる」という点で「遺書」とは全く違うものです。遺言によって財産の分配を指定することは、相続人間の無用な争いを未然に防ぐことができ、または大事な人に報いることができます。従って遺言はご自身の最後の明確な意思表示による自己実現であると同時に、ご自身の家族や大事な人を守るための責務として、積極的に取り組んでいくことが望ましいと思います。
◇遺言作成のメリット
具体的なケースについては「遺言書を作成した方が良いケース」をご参照下さい。
1.相続手続がスムーズに
預貯金・不動産等の手続が簡略化され、遺族の手間が省ける。
遺言書がない場合は、まず、全ての財産を調査することから始まり、相続人全員で遺産分割協議を行った上で、預貯金、不動産、株式等の名義変更等の手続きを進めていくことになりますが、これらの手続きを相続人全員で共同して行っていかなければなりません。相続人が多い場合や疎遠になっている者がいたり、音信不通の相続人がいる場合は一つの手続きをするにもかなりの時間と手間がかかります。
遺言書において全ての財産と、誰に相続させるかを明確にしておくことで、遺産分割協議を行う必要もなく名義変更等も相続した者が単独で行うことができます。また遺言執行者を指定しておけば預貯金の手続きも円滑に行うことができますので、遺言書の有無はその遺言者の亡き後、相続人が相続手続きに費やす労力に大きく関係してきます。
2. 思いを伝えることができる
財産に関することのみならず様々な希望を伝えることができる。
遺言書には「付言」といって、法的な効果はありませんが、財産に関すること以外の記載もすることができます。
子供に事業を継承してもらいたい、特定の人に財産をのこしたい、認知症の配偶者の面倒を誰かに見てもらいたい、身寄りがなくお世話になった人にお礼をしたい、お墓や祭祀のことについて希望を叶えてもらいたい、等々、様々な思いを「何故そうしたいか」という理由も含めて付言として記載することはむしろ一般的と言えますし、それによって遺言書自体が温かみを帯びるという効果も期待できますので、心置きなく遺族への思いを記載して、あたたかい遺言書を作成しましょう。
当事務所の取り組み
遺言を遺そうという方は、百人いれば、百人すべて経歴、環境、財産、思いは違うものです。当然遺言書の内容も比較的シンプルなものから複雑な信託などを考えたものまで様々です。
当事務所は依頼者一人一人の方からしっかりとお話をうかがい、司法書士という専門家として適切なアドバイス、サポートができるよう尽力いたします。また、いかなるケースにも対応できるよう税理士、弁護士などの他士業との連携も整備しておりますので、遺言書の作成をご検討中の方はお気軽にご相談下さい。